進化するアルツハイマー型認知症治療薬
2024.10.28(かけはしvol.124掲載)
時間をかけてゆるやかに進行する認知症
認知症は原因となる病気によっていくつかの種類に分類され、症状や進行の仕方に違いがあります。中でも最も多いのがアルツハイマー型認知症で、認知症全体の約68%を占めています。
アルツハイマー型認知症は、アミロイドβというタンパク質が脳に蓄積し、神経細胞が死滅することで脳が萎縮する病気です。特に記憶を司る海馬に影響が出やすく、記憶力の低下が顕著です。軽い物忘れから始まり、MCI(軽度認知障害)という初期段階を経て、数年でアルツハイマー型認知症へと進行します。
レカネマブってどんな薬?
レカネマブは2023年12月に承認、発売された「アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)」と「アルツハイマー病による軽度の認知症」に対する新しい薬です。アミロイドβがかたまりになる途中のアミロイドβプロトフィブリルに引っ付くことで、異物を排除するミクログリアを引き寄せ、アミロイドβを取り除くことができます。
1年半の点滴投与でアミロイドβが約60%減少し、アルツハイマー型認知症の進行を約30%遅らせることができると言われており、少しでも自分らしく生活できる期間を増やすために投与を検討する人が増えています。
投与の可否は厳しく定められており、脳にむくみや出血がある人をはじめ、リスクがある場合、副作用が起きる可能性が高い場合などは投与することができません。
チーム医療で万全のサポートを
当院は、脳神経内科、脳外科、こころの診療科の3科が、それぞれの専門性を活かしながら科をまたいで協力しあい、認知症の診療に当たっています。
治療の副作用で出血があれば脳外科で、精神障害が見られればこころの診療科で専門的な診療が可能です。また、認知症を専門とする認知症認定看護師、もの忘れのテストを担当する臨床心理士、医療費の相談などを担当する事務など、万全の体制で認知症患者さんのサポートを行っています。
ちょうどいい規模感で強力なチーム医療を提供できるのは、当院ならではの強みだと感じています。また、福井県のレカネマブ投与の実績は当院が最多となっており、これは地域の医療機関との信頼関係をしっかり築けていることが理由の一つだと考えています。チーム医療と強固な地域連携で、今後も認知症の患者さんにしっかりと寄り添っていきたいと思います。