がん患者さんと新型コロナ感染症②
2021.01.04(かけはしvol.106掲載)
<放射線治療> 放射線治療の延期は好ましくありません
■一般的な放射線治療で免疫力は下がりません
免疫力の低下は、免疫を司る白血球が減少することが原因です。血液細胞は骨髄でつくられています。例えば前立腺がんの治療を例にとりますと(図3)、がんの周囲の組織を避けて治療するため骨髄にあたることはありませんので白血球が減少することもありません。
■抗がん剤治療併用、胸部への放射線治療には注意が必要
抗がん剤治療を併用した化学放射線療法の場合、免疫力が低下する可能性があります。胸部への照射では数か月後に放射線肺炎が起こることがあり、これに新型コロナ肺炎が重なると重症化のリスクが高くなる可能性は否定できません。
■ご自身のリスクを主治医に確認しましょう
放射線治療が他のがん治療に比べて危険性が高いとは考えにくいですが、がん患者さんは一般の方より新型コロナの重症化リスクが高いという報告もあります。「どのような治療を受けているか」、「免疫力はどの程度低下しているか」などご自身のリスクを確認しましょう。
<不安> 大切なのは一人で抱えこまないこと
■不安を避けるには、正しい情報に触れること
不安とは「対象のない恐れの感情」。得体の知れない脅威があるときの心と体の反応ですが、不安な感情があるから、適切な行動をとることができます。まずは不安に対しての正しい知識を得ることが大切です。がんと新型コロナについての情報は、以下のような信頼できる情報源に触れるようにしましょう。また、テレビやインターネットなどを見過ぎないことも大事です。情報に触れることを1日1~2時間程度にして、新型コロナのことを考えない時間をつくるのも良いことです。
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
国立がん研究センターがん情報サービス「新型コロナウイルス感染症Q&A」
https://ganjoho.jp/public/support/infection/covid19_QA.html
■不安を他の人に聞いてもらいましょう
不安な気持ちは、その悩みを聞いてもらうことで多少和らぐこともあります。1人で抱えこまず、家族や友人などに悩みを聞いてもらいましょう。その際は、できればテレビ電話など表情も分かるような交流手段を使うことをお勧めします。また、ほどよい運動をすることは不安の対処にも大切です。
<緩和ケア> 緩和医療は感染予防をしつつ、継続しましょう
■外来での緩和医療の継続は可能です
がんによるつらい症状を和らげることは、生活の質の改善につながりとても大切です。外出や医療機関での接触が気になり通院が不安な場合は、病状やその時点での流行状況にもよりますが、受診の延長や、電話などでの診療ができる場合もありますので主治医に相談してみてください。
■在宅緩和療養には感染予防を徹底しましょう
もし家族内で発症すると、がん患者さんだけでなく、往診や訪問看護、在宅ケアサービスなどを介して他の家族にも感染が拡大する可能性があります。介護者の方も、標準的な感染防止を行い、ひとりひとりが「自分が感染者のつもりで周りの人に感染させない配慮をしながら生活する」ことが望まれます。
<まとめ> 新型コロナウイルス感染症には、正しく恐れ、適切な対応をしましょう
新型コロナウイルスには、まだまだ不明な点が多いのが現状であり、がん患者さんとそのご家族の不安は並大抵のものではないと思います。
正しい情報をもつことは、不安の解消につながります。まずは信頼できる情報を得ることが大切です。
医療機関では、感染拡大防止対策を徹底し、患者さんのがんの進行状況や治療効果、地域の流行状況などから総合的に判断して治療方針を提示しています。心配なときには、自己判断せずに必ずかかりつけ医や主治医に相談してください。
そして何より、ひとりで抱えこまないことが大切です。がん診療連携拠点病院には、「がん相談支援センター」があり、電話や対面でがん専門相談員が、がん患者さんの相談を聞いています。不安に思ったら、お気軽に利用をしてみてください。