肝臓の病気

急性肝炎

急性肝炎とは、主に肝炎ウイルスが原因で起こる急性のびまん性疾患で、黄疸、食欲不振、嘔気嘔吐、全身倦怠感、発熱などの症状を呈します。今までに肝炎ウイルスとしては、A,B,C,D,E型の5種類が確認されていますが、その他の原因としては、5種類以外のウイルスや薬剤などがあります。急性肝炎は一般的には予後良好で、遅くても3~6ヶ月以内に治りますが、約1~2%で重症化(劇症化)し、一度劇症化すると高率に死に至る可能性が高くなります。治療として移植を行うことがあります。

C型肝炎

C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)によって肝臓が炎症を起こす病気です。このウイルスは血液を介して感染し、急性肝炎は軽度に終わりますが、約70%と高率に持続感染となり、慢性肝炎から長い年月を経て肝硬変、肝がんと進展することがあります。自覚症状はほとんどなく、C型肝炎ウイルス陽性であれば検査や治療を受ける必要があります。近年治療が急速に進歩しており、高い確率でウイルス駆除が可能となっています。

B型肝炎

B型肝炎とは、B型肝炎ウイルス(HBV)によって肝臓が炎症を起こす病気で、血液や体液を介して感染します。幼少期に感染すると持続感染(キャリア)となり、成人では急性肝炎を起こすとされていましたが、最近では成人でも持続感染となる場合が多くみられます。慢性肝炎、肝硬変、肝がんの原因となり、肝炎重症化や再活性化を起こすこともある多彩な病態を示します。抗ウイルス療法により肝炎の鎮静化を図りますが、駆除は不可能です。ワクチン接種により感染の予防は可能です。

肝硬変

B型やC型肝炎ウイルス感染、アルコール、非アルコール性脂肪性肝炎などを成因とした慢性肝炎による持続的な肝細胞障害においては、肝細胞の壊死と再生が繰り返されます。肝硬変は、このような慢性の肝細胞障害により線維性隔壁に囲まれた再生結節(偽小葉)が形成された肝障害の終末像です。そして肝硬変になると、肝機能が保たれている代償期を経て、肝予備能が低下し、黄疸・腹水・肝性脳症・食道静脈瘤を呈する非代償期へと移行します。さらに、肝細胞癌の出現率も高くなるのが問題です。治療は症状に応じた対症療法が中心です。

肝がん

肝がんには、肝臓から発生する原発性と、他臓器がんの転移で生じる転移性があります。原発性の約9割は肝細胞がんで、多くはB型肝炎やC型肝炎ウイルスによる肝硬変から発症します。しかし近年、糖尿病や肥満などの生活習慣病に由来するがんが増加傾向にあります。肝炎ウイルスや生活習慣病の治療が予防の第一歩です。症状が出にくいため血液検査・画像診断検査が必要です。また治療は、手術・局所療法・塞栓療法・化学療法などがあり、全身状態や肝臓・腫瘍の状態に応じて選択され、 組み合わせて行うことも可能です。

アルコール性肝障害

アルコールにより引き起こされる一連の肝臓障害のことであり、アルコール摂取を続けることにより、アルコール性脂肪肝、肝炎、肝線維症、肝硬変の順に進行していきます。肝がんの原因にもなります。大量に短期間に飲酒すると、急性アルコール性中毒や重症アルコール性肝炎となり高率に死に至る場合もあります。一日の適正な飲酒量を知っておくことが大切です(一日1~2合まで。2勤1休(2日飲んで1日休む)。

脂肪肝

アルコール性と非アルコール性に分けられますが、最近非アルコール性の脂肪肝が急増しています。過食や運動不足により過剰の栄養が肝臓に運ばれ、中性脂肪が肝臓に貯まることが原因です。脂肪肝から肝炎、肝硬変となることがあるNASH(非アルコール性脂肪肝炎)と呼ばれる病態があり、肝がんを合併することもあります。メタボリック症候群を高率に併発しており、治療は、食事療法、運動療法が主体です。

自己免疫性肝炎(AIH)

自己免疫性肝炎は、慢性に経過する肝炎で、肝細胞が障害されます。自己免疫性肝炎が発病するのには自己免疫が関係していると考えられています。中年以降の女性に好発することが特徴です。原因がはっきりしている肝炎ウイルス、アルコール、薬物による肝障害、及び他の自己免疫疾患に基づく肝障害を除外して診断します。また、治療では免疫抑制剤、特に副腎皮質ホルモン製剤(以下、副腎皮質ステロイド)が著しい効果を発揮します。最近の調査により、急性肝炎として発症する自己免疫性肝炎の存在が明らかとなっており、まれに重症化します。C 型肝炎を合併した自己免疫性肝炎もあります。

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