【健康経営】INVEST IN WELLNESS vol.3制作現場レポート
さまざまな経験を通して、自分らしくイキイキと人生を輝かせている人。
社員を大切な資本とし、健康経営に実直に取り組む企業。
誰も取り残さず、一人ひとりの豊かな暮らしの実現のために奮闘する自治体。
“何をするか”という目に見える取り組み以上に、大切なのは“Why=なぜするのか”。
それぞれが持つストーリーに秘められたWhyを紐解き、
次につながる大切な一歩を踏み出すきっかけをご提案する『INVEST IN WELLNESS』。
3号目となる今回は、人、企業に続いて、自治体にフォーカスしました。
先日完成したばかりの『INVEST IN WELLNESS vol.3』。
その制作の過程や裏側を、健診センタースタッフがお届けします!
いざ、取材へ!
6月某日。取材が行われたのは福井県庁の会議室。今回お話を伺ったのは、福井県健康医療局健康政策課様です。
主に県民の健康づくりを後押しする政策を企画・実施する「健康長寿グループ」と、国民健康保険法や高齢者医療の確保に関する業務を行う「国保・高齢者医療グループ」の二つのグループで、福井県全体の健康増進に取り組んでいます。
取材に応じてくださったのは、「健康長寿グループ」の野口裕揮さん。今年初開催となるウォーキング事業「はぴウォーク2024」の担当者でいらっしゃいます。
なぜ、今ウォーキングなのか?
どのような経緯や狙いで「はぴウォーク2024」を企画し、どのように進めてこられたのか。
『INVEST IN WELLNESS
vol.3』を読めば大筋は掴んでいただけると思いますが、ここでは本誌に載せきれなかった情報も含め、もう少し深堀りしてお伝えできればと思います。
なぜ、ウォーキングなの?
「健康づくり」という言葉は、どこか漠然としていますよね。
県として目指しているのは具体的にどんなところですか?
県では「「生活習慣を改善」し、健康寿命のさらなる延伸」を全体目標に掲げ、「元気な福井の健康づくり応援計画」として、県民の健康増進に向けた取り組みを行っています。健康寿命とは、医療や介護の必要がなく心身ともに健やかに生活できる寿命のこと。全国と同様に、福井県の死亡原因の大半を占めるのは悪性新生物、心疾患、脳血管疾患などの生活習慣病です。生活習慣の改善で病気を予防し、健康を維持して健康寿命を延ばす。そのためのアプローチを多方面から行っています。たとえ寿命が長くても、健康でイキイキと自分らしく生活できる期間の長さによって、人生の幸福度は大きく変わってくるはずです。人生100年時代、長い長いこの先の自分の人生を思えば、健康寿命を早いうちから意識しておくことが重要なのは明確ですね。
ここで、福井県の現状を見てみましょう。
健康寿命の推移
上のグラフは福井県と全国の健康寿命の推移を示したもの。男女ともに全国平均を上回っています。しかし全国順位は低下しているのが現状だそう。
生活習慣の改善には大きく「運動」と「食生活」の二つがあり、多くの人が取り組みやすいものとして、運動においては「歩行」、食生活においては「減塩」があります。この二つを最重点要素として、生活習慣を改善するための施策を推進しています。もちろんそれが全てではなく、「目と歯の健康」「こころの健康」「たばことアルコール」、さらには「睡眠」「女性の健康」「健康経営」といった視点も「元気な福井の健康づくり応援計画」には取り入れています。
なるほど!では最重点要素である「歩行」について詳しくお聞きしたいです。
これまでにも、何か歩行に関する取り組みをされていたのですか?
歩きやすいスニーカーで通勤通学し、歩行時間を確保しようという「スニーカービズ」、ショッピングセンターを買い物がてら歩こうという「ショッピングセンターウォーキング」などを推進してきました。福井県は降雨日数がダントツに多く、雨や雪で体を動かす機会が奪われがちなので、大型の屋内施設であるショッピングセンターでのショッピングを活用して少しでも歩く機会を増やそうという取り組みです。しかし調査によると、県民の平均歩数は減少傾向にありまして…
平均歩数の状況
どうして減ってしまっているのでしょう?
はっきりとした原因が分かっている訳ではありませんが、コロナ禍のテレワークによる運動不足は大きいと思います。また、最近の働き世代は仕事、家事、育児、介護と日々忙しく、なかなか歩く時間を取れないのかもしれませんね。
平成16年に始動した「元気な福井の健康づくり応援計画」。令和6年度にスタートした第5次計画では、改めて「歩行」に力を入れ、平均歩数の増加と歩行の習慣化に取り組むことになりました。そして、私たち行政からのアプローチがなくても、自ら健康づくりを実践していける環境を作る必要があると考え、歩行習慣のきっかけ作りとして「はぴウォーク2024」を開催することになったのです。
素朴な疑問なんですが、ランニングでもジョギングでもなく、
ウォーキングなのはなぜですか?
ランニングやジョギングだと専用シューズなどの装備が必要ですし、今まで運動習慣のなかった人が急に始めると膝を痛めてしまうリスクがあります。健康に関心の薄い人、運動習慣のない人でも手軽に取り組めるという点で、歩行は非常に大切だと考えています。
確かにランニングだと「やるぞ!」という気合いが必要かもしれません。
その点ウォーキングは気軽にでき、日常生活の中に取り入れやすそうです。
福井大学のトライアル分析によって、「平均歩数5,000歩以上で男性では骨格筋および脂質代謝に対して、女性では骨格筋に対して良好な影響を及ぼし、健康状態の改善に有益である可能性がある」ということが分かっています。このデータはわたしたちの議論の出発点でこそありませんが、歩行の重要性を示してくれる重要な研究結果ですね。
なるほど〜!いつでもどこでも誰でもできて、さらに健康にもなれる。
だから、ウォーキングなんですね!
自分の体と健康に向き合うきっかけに
さて、その「はぴウォーク2024」。
歩数目標を立てて、達成すれば「ふくいはぴコイン」500ポイントがもらえるというウォーキングキャンペーンです。
詳細については、県のHPを確認してくださいね!
https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/016250/kenkou-zukuri/happywalk2024_01.html
「はぴウォーク2024」開催に向けて、苦労した点などあればお聞きしてみたいです!
ウォーキング事業は全国さまざまな自治体で行われていますが、福井県は現在過渡期と言えるでしょう。力を入れて先導して行っている市町もあれば、まだ実施していない市町もあり、インセンティブの有無や歩数の管理方法など制度や仕組みもバラバラ。調整が一律にできないところが難しかったですね。せっかくチャレンジしようと思ってくれたとしても、手続きが面倒だと思われてしまったら終わりです。なるべく簡単に参加できるような仕組みを設計していますが、結果としてどう現れるかはやってみないと分からないので不安もありますね。
市町によってそんなに差があるんですね! ちなみに、県として参考になる市町はありましたか?
池田町が2023年に行った実証実験は興味深かったですね。県のウェルビーイング事業やDX推進事業にも位置付けられています。池田町が開発した公式アプリを使用していましたが、歩数管理だけでなくチャット機能やランキング機能も実装されていました。
実証期間が終わる頃のアンケートでは「歩数も健康感も増した」という回答が多く、歩くことを通して生まれた町民間の交流が、日々の新しい刺激になり、個人の幸福感にも繋がっていたようです。町民の行動や主観的な健康がどう変化していくのか。私たちの事業の目的とは少し異なりますが、面白いなと思いました。
ただ歩いて健康になるだけでなく、副次的効果が発生しているのは面白いですね!池田町の動きに今後も注目したいです。さて、これからの展望についてもお聞きしたいのですが、今年の目標参加数を教えてください。
初年度なのでどうなるか分からない部分もありますが、まずは1.5万人の参加を目指しています。今後もはぴウォークを継続するかどうかは未定ですが、健康づくりは継続することが大事ですから。「2024」とつけたのは実は伏線で、続けていく方向に持って行けたらとは思っています。
福井県全体での一大ムーブメントになるような、
長く続く事業になって欲しいです。
この事業の目的は、はぴコインを配ることではありません。このキャンペーンが終わったら歩行習慣も一緒に終わってしまうのでは意味がありませんよね。はぴウォークはあくまでもきっかけ作り。歩数や健康指標(体重・腹囲・血圧など)の測定を続けて主観でも数字でも健康になったことを実感し、健康づくりを継続する動機にして欲しいと思っています。県民が自発的に健康について考え、行動するきっかけの一つになってくれたら嬉しいですね。
取材を終えて
当たり前のことですが、自分の健康を人任せにはできません。こうやって県民のために用意してくださるきっかけを、生かせるかどうかは自分次第。「ふくいはぴコイン」は確かに魅力的ですが、なぜ、歩くのか。そこを見誤ってはいけませんね。
物腰柔らかく、分かりやすくお話しくださる野口さん。その口から語られる“Why”を紐解くことで、次にやるべきことが明確になった気がします。
野口さん、お忙しい中ありがとうございました!
ちなみに、この日は表紙の撮影も行いました。健康医療局健康政策課の女性2名にご協力いただき、県庁に向かってウォーキングしている様子を撮影。
前を向き踏み出したその一歩が健康な未来に繋がっている、そんな思いを込めているとかいないとか…。どんな仕上がりになったのか、ぜひ『INVEST IN WELLNESS vol.3』本誌でご確認ください。