C型、B型慢性肝炎で、経口剤のみの治療を中心とした抗ウイルス療法を行っている患者さんまたは治療予定、治療後の患者さんを専門に、完全予約制で診療しています。かかりつけ医との連携も積極的に行っています。治療前の説明、治療中のケアは肝炎医療コーディネーター(看護師、薬剤師、栄養士、検査技師など)がチームでサポートします。また、治療中の経過、見通し、肝炎治療の最新情報の提供は肝臓専門医により詳しく行っています。
診療日
月~木曜日の午前中
予約受付・お問合わせ
内科部長
真田 拓
(さなだ たく)
免許取得:平成8年
内科副部長 医療情報センター長
上田 晃之
(うえだ てるゆき)
免許取得:平成12年
内科医長
野村 能元
(のむら よしもと)
免許取得:平成17年
~C型肝炎治療 最前線~
新薬登場で新局面
全国の特徴クラスの実績でC型肝炎の完治を目指す
インターフェロンとは異なる新たな治療法の登場
これまでC型肝炎治療でよく知られている治療法に、1990年代から現在まで広く普及しているインターフェロンがあります。一定の効果がある一方で、頭痛や発熱、全体倦怠感、不眠、うつ状態の出現などの副作用があり、C型肝炎治療はつらいというイメージにつながっていました。
しかし、一昨年からC型肝炎の治療に経口剤だけによる方法が登場しました。それまでのインターフェロン療法とはまったく異なる新たな治療法です。昨年末には3番目の経口抗ウイルス薬が発売され、2年前に最初の薬が登場した“手探りの時代”から、治療薬を“選択する時代”に突入したのです。
安全で、効果はほぼ100%
れまでもインターフェロンと経口剤を併用する方法はありましたが、一昨年に出た薬はそれまでの治療法を一新する、インターフェロンを一切使わないものでした。その後、第一世代のものより効果が高く、ほぼ100%という高い完治率の第二世代の飲み薬が昨年発表されました。
この新薬のメリットは、高い完治率はもちろんのこと、副作用など患者さんへの負担が少ないという点も見逃せません。インターフェロン療法ができなかった方や副作用への不安があった高齢の方などにも使用できる画期的な治療法です。
治療期間の短さが特徴
この飲み薬による治療の大きな特徴は、治療期間が短い点です。第一世代のもので6ヶ月、第二世代のものではわずか3ヶ月で終了します。また、飲み薬のため入院せずに日常生活を送りながら治療が続けられるメリットもあります。
インターフェロン療法は残念ながら直らないケースもありましたが、この飲み薬による治療ではほとんどが完治します。しかし、万一飲み忘れたりすると、治療に失敗してしまったり、耐性ウイルスの問題もあります。決して安価ではない薬ですので、しっかり治すことを理解し、治療に臨んでいただきたいと思います。
治療後のフォロー
新薬の登場で新たな局面を迎えたC型肝炎治療ですが、C型肝炎ウイルスが消えたとしても、肝がんの発生がゼロになるわけではなく、4~5%程度あることも知っておいていただきたい事実です。
特に、高齢の男性で、慢性肝炎から肝硬変に進んでいる状態の方はどうしても発がんしやすいといわれていますので、当院でも、丁寧に時間をかけて経過観察を行っていきます。
「体が楽になった」と患者さんの声
実際に治療にあたって、患者さんから「投与の途中の段階でも体が楽になった」「食欲が増した」というお話をうかがいます。よく、C型肝炎はほとんど症状がないといわれますが、新薬がウイルスを減らす段階で、体の調子がよくなるのを実感されるようです。それだけ肝臓が体に占める比重が大きいことを示しています。
C型肝炎治療の最終目的は、単にHCVウイルスを排除するだけではありません。肝機能を正常化することで、肝硬変への進展や肝がんの発症を阻止し、生命予後を改善することこそ、この治療の最終ゴールだと考えています。その意味からも、今後もさらに登場が予測される新薬の治療や治療後のフォローなど、患者さんの立場に立った医療を行っていきたいと考えています。
肝臓専門医のいる医療機関では新薬は助成金が受けられます
新薬は効果が高い一方で薬価が非常に高額という側面がありますが、日本肝臓学会肝臓専門医が在籍する医療機関で治療を実施した場合のみ、現在のところ自治体の助成を受けることができます。
この助成により、下記の表のように、最先端の治療が低い自己負担額で可能になるのです。当院は肝臓専門医が6名在籍し、肝炎再診治療の実績は全国の特徴クラス。助成についてなど肝疾患に関するご相談・お問い合わせは肝疾患相談支援室まで。
世帯の市長村民税 (所得割)課税年額 |
自己負担限度額 (月額) |
---|---|
235,000円以上 | 20,000円 |
235,000円未満 | 10,000円 |
一人でも多くの患者さんを救うために
劇的な効果のある薬も、患者さんの治療に使わなければ意味がありません、C型肝炎ウイルス感染者のうち、ご自身がC型肝炎であることに気づいていない方、C型肝炎であることを知りつつ治療を受けていないという方が、まだ100~150万人いるといわれています。この方たちに検査を受けていただき、診察・治療に進めていくことがC型肝炎撲滅に向けた全国的な課題となっています。
福井県では、唯一の肝疾患診療連携拠点病院である当院が先駆けて、C型肝炎の患者さんの検査と治療の取り組みに力を入れています。
患者さんへ積極的に働きかけ
その取り組みのひとつとして当院が重点をおいているのが、患者さんへの働きかけです。当院では、他の疾患で受診されている患者さんでも、入院時や手術前、健康診断などで行う血液検査(HCV抗体検査)で陽性と判明した方をリストアップし、さらに確定診断ができるC型肝炎の検査・治療を受けていただくよう積極的に主治医を通して説明させていただいています。こうして陽性患者さんを拾い上げ、治療できる患者さんを一人でも増やせるよう努めています。
すでに健診などで検査を受けてC型肝炎キャリアであることを知っていても、これまでの治療に対する拒否感などから敬遠されているかたも相当数いらっしゃると思います。そうした方に対しても「肝炎コーディネーター」とよばれるスタッフが、肝炎ウイルス検査や新しい治療法についての正しい情報を提供し、患者さんが早期に精査、治療にとりかかることができるよう支援を行っています。
看護師や医療ソーシャルワーカーをはじめ多職種のコーディネーターを養成し、気軽に相談に応じられる体制を整えることでC型肝炎治療の啓蒙をすすめることも、肝疾患診療連携拠点病院としての当院の大きな使命であると考えています。
採血で感染を検査
肝炎ウイルスへの感染の有無は、血液検査で調べることができます。肝がんの発症率は、治療をせずに放置した期間に比例して高くなります。肝臓は「沈黙の臓器」ともいわれ、発症しても自覚症状がほとんどありません。ご自身が感染しているかどうか不明な方は、一度検査を受けていただきたいと思います。
当てはまる方は一度検査を!
C型肝炎とは?
C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染して起こる肝臓の病気で、血液を介して感染します。刺青(タトゥー)やカミソリの共用、あるいはC型肝炎ウイルスが発見される前に行われた輸血や血液製剤、適切に消毒されていない器具による医療行為などが主な感染経路と考えられています。しかし、他人の血液に触れない限り、家庭や集団生活で感染するおそれはまずありませんし、現在の輸血用の血液や血液製剤も高い精度の検査が行われているため心配ありません。
治療を受けているのは3割以下
日本には肝炎症状のないキャリア(持続感染者)を含めると150~200万人の患者さんがいると推測されています。新しい感染はほとんどないため、年齢分布は右肩上がりで、60歳以上が多くなっています。しかし、医療機関で治療を受けている人は50万人程度で、残りの100~150万人の中には自分が感染していることに気づいていない人もいます。
肝がんへ進行するC型肝炎
肝臓は、体に必要なタンパク質や栄養分の生成や貯蔵、老廃物や薬物の解毒などの大切な機能を果たす臓器です。HCVに感染すると約30%の人は自然にウイルスが排除されますが、約70%の人は排除されず、慢性肝炎、肝硬変、肝がんと進行する場合があります。一度慢性肝炎になると自然に治ることはないため、治療が必要です。
肝がんの原因の65%
現在、がんによる死因で3番目に多い肝がん。実に年間で3万人の方が肝がんにより亡くなっています。その原因の約65%はC型肝炎ウイルスの感染によるものです。つまり、C型肝炎を治療することで、肝がんは予防が可能なのです。肝臓は「沈黙の臓器」といわれ、自覚症状がないまま病気が進行してしまいます。早い段階でC型肝炎ウイルスへの感染の有無を調べ、感染が分かった場合は、適切な治療を受けていただくことが、肝硬変や肝がんの発症を抑えることにつながります。
C型肝炎に関するすべてのご相談窓口
福井県唯一の『肝疾患診療連携拠点病院』として、肝臓病に関してあらゆるご相談をお受けする窓口がこの『肝疾患相談支援室』です。
ご相談は無料ですので、お気軽にお越しください。
予約制ではありませんが、事前にご連絡をいただくとスムーズに相談いただけます。外来通院中、入院中でない方でもご相談に応じます。
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