「早期発見」をキーワードに、チーム医療で取り組む
現在、日本では膵がんが増え続けており、男性のがんによる死亡の第5位、女性では4位になっています。生存率が主要がんの中で最低といわれている膵がんですが、自覚症状がないため早期発見がきわめて難しいという特徴があります。しかし、膵がんは早期発見し治療すれば、治すことも可能です。
当院では平成27年6月1日より「胆道・膵疾患外来」をスタートさせました。
これまでも膵疾患に対する診療は行っておりましたが、従来以上に早期発見と早期治療を行うべく、「胆道・膵疾患外来」として体制を整えました。
【診療日】火曜日、水曜日の午前中
外科副部長
寺田 卓郎
(てらだ たくろう)
免許取得:平成11年
非常勤医師
野村 佳克
(のむら よしかつ)
免許取得:平成16年
早く見つけるために安全で正確な治療のために
胃の裏側にある、長さ約15センチ、上下約5センチ、厚さ約2センチの細長い臓器が膵臓です。主な機能は、消化酵素の分泌や、胃酸の中和、血糖の調節などです。
現在、日本では膵がんが増え続けており、男性のがんによる死亡第5位、女性では4位になっています。膵がんは治りにくいという認識をお持ちの方も多いかもしれません。しかし、早く見つけて早く治療すれば、治る病気です。必要なのは、自覚症状が出る前の、がんが微小な状態で発見することです。
当院では、従来以上に早期発見と早期治療を行うべく、検査や治療にそれぞれ専門医を配置するとともに、CT検査、MRI検査に加えて超音波内視鏡検査「EUS(+FNA)」を活用した、「患者さんの心にも体にも優しいがん診療」に取り組んでいます。
膵がん手術に関しては、当院は日本肝胆膵外科学会より、2012年に北陸でも数少ない「高度技能専門医修練施設(B)」の認定も受けています。当院と地域の医療機関の連携を進めつつ、膵がん治療に努めていきます。
患者さんとの対話から治療方針を決定
膵がんにおける標準的な治療法には、手術、抗がん剤治療、放射線治療があります。がんの状態などによって、選択あるいは組み合わせで治療する集学的治療を行っていきます。現在当院での膵がんの治療では、がんの状態をステージに分けて「切除可能」「境界」「切除不能」に分け、それぞれ治療方針を立てています。その際は、患者さんとの対話を通して納得いただきながら決定し、治療を進めていきます。
膵がんは消化器系のがん手術で最も高難度ですが、膵がんを治癒するための唯一の手段は外科手術です。抗がん剤や放射線治療も高い効果は発揮しますが、完全治癒することは困難です。
膵がんが発見され手術の適応となるのは現状では約40%程度。手術可能な状態で発見することが最も大切です。リスクカードや地域の医療機関との連携のなかで、いかに早く正確な診断を行い、手術で病巣を切除するかを最大の課題として取り組みを進めているところです。
放射線治療を組み合わせ、確実な治療を追及
手術が可能な膵がんに対しては、手術で腫瘍を除去します。ただし、膵がんに関しては再発のケースが多いのも事実です。そのため当院では、病状の進行度によっては手術前に抗がん剤治療や放射線治療を併用する治療も行っています。当院の放射線治療装置トモセラピーは精度の高いコントロールが可能です。がん組織を手術前により小さくするとともに、肉眼では見えないがん細胞を除去することが可能になりました。また、術前だけでなく術後の再発病変に対しても取り入れることで、さらにがん治療の効果を高めています。
ステージゼロで見つけるためにリスクカードを活用
膵がんは40歳以降増加し、年齢が高くなるにつれて多くなっていきます。また、膵がんが発見されにくい理由として、大きくなるまで症状が出てこないことが挙げられています。さらに、危険因子が良く分かっていないため、予防法もありません。
膵がんが手術適用の1~2センチの大きさになるまでに、おおよそ5~6年かかるといわれています。その期間で見つけること、あるいはもっと小さな段階で見つけることが、膵がんを治すもっとも効果的な手段なのです。
危険因子は不明ながら、さまざまな症例をデータ化するなかで、かかりやすい傾向は分かってきました。(表1)これらをもとに、内科 野村医師が所属するグループは、年齢や生活習慣、既往歴などから膵がん発生のリスクを点数化した「リスクカード」(表2)を作成しました。
自身の状態をカードの項目に照らし合わせ、該当する点数があれば加算し、3点で体外式腹部超音波検査を、4点以上でCTもしくは超音波内視鏡+MRI検査をお勧めしています。
最新の設備と専門医の手で検査や診断を
膵がん診断は、近年、大きく進歩しています。CTやMRI、超音波内視鏡(EUS)、内視鏡を用いた造影検査(内視鏡的逆行性胆肝膵造影:ERCP)などの画像検査が用いられます。しかし、画像診断でも正確な診断を下せないケースもあります。
そこで当院では、EUSを活用して膵臓の状態を観察しながら安全に針生検を行うことのできる超音波内視鏡下穿刺吸引生検法(EUS-FNA)の設備を導入しました。この検査は、膵がん診断の専門医である内科 野村佳克医師が担当します。これまで数多くの検査を手がけてきた実績をもち、正確な膵がん検査、診断を行うことのできるプロフェッショナルです。
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