がんに放射線を照射し高い治療効果を
放射線治療とは、X線やガンマ線、電子線などの放射線を高線量で照射することでガンを死滅させる治療法です。放射線ががん細胞内の遺伝子(DNA)にダメージを与え、がん細胞を破壊。高線量の放射線をあてるほど高い治療効果が期待できます。当院では2008年に放射線治療センターを開設、2009年に北陸で初めて、IMRT専用機であるトモセラピーを導入し、これまで多くの診療実績を重ね、地域がん診療連携拠点病院として福井県内の放射線治療に貢献してきました。2022年9月には新型トモセラピー「ラディザクト」を導入し、さらに2023年5月には、福井県で初めて定位放射線治療専用機である「サイバーナイフS7」を導入しました。これまでよりさらに「患者さんに優しいがん診療」「からだにやさしい放射線治療」を行っていきます。
当科は完全予約制となります。受診にあたっては、院内診療科、またはかかりつけ医師の紹介状をお持ちの上、ご相談・ご予約ください。
隣接する重要臓器を避け、
限りなくがんの形に合わせて照射
放射線治療とは、高線量の放射線を照射してがんを死滅させる治療法。高線量の放射線をあてるほど高い治療効果が期待できます。しかし、がんの形は複雑なうえ周囲を正常組織がとりまいているため、これまでの放射線治療では、がんだけでなく周囲の正常組織にも放射線を照射せざるをえませんでした。よって周囲の正常組織や重要臓器へのダメージを抑えようとすると、腫瘍に対して充分な放射線量を照射できないという問題を抱えていました。
そんな放射線治療の命題に応えるべく登場したのが、IMRT(強度変調放射線治療)という治療法で、隣接する重要臓器を避け、三次元的にがんの形に合った線量分布を作成して、高精度に放射線をあてることができる治療法です。トモセラピーはIMRTの専用機としてアメリカで開発された機器で、放射線の照射口が360度身体のまわりを回転しながら照射します。腫瘍の形に合わせて放射線に強弱をつけることで強くあてたいところには強く、弱くあてたいところには弱く、と放射線の量も調整できるので、正常な組織へのダメージを抑えることができます。寝台が可動するため、広範囲で複数の病変も一度に照射することが可能です。
トモセラピーはがんを狙いうちできるのが大きな特徴ですが、がんに狙いを定めるためには、がんの位置や形を正確に捉えていなければ威力を発揮できません。トモセラピーは照射前に患部の画像をCTで撮影しますが、新型トモセラピー「ラディザクト」ではより鮮明な画像となり、がんの位置や形をかなり正確に特定できるようになったため、がんを的確に狙えるようになりました。
また、このCTの撮影時間も大幅に短縮し、患者さんの負担軽減につながります。
肺や肝臓などの横隔膜の近くにある腫瘍は呼吸によって動きがあるため、これまでは照射範囲を動きの範囲に合わせて大きくとる必要がありました。新型トモセラピーでは腫瘍の動きを追尾し、患部に狙いをさだめた照射ができるので、これまでよりも正常な組織への影響を少なくできるようになりました。
たとえば口、鼻、喉などの頭頸部のがんでは、周囲に重要器官が密集していますが、トモセラピーを用いることで正常組織への影響を抑えた照射が可能となり、副作用が軽減されます。
放射線治療は根治を目指した治療から、症状緩和を目指した治療まで、がんのすべてのステージで適応になります。トモセラピー単独での照射だけでなく、手術前の照射や化学療法との同時併用での根治照射、術後の再発予防照射や、血液疾患に対する骨髄移植前の全身照射など、幅広い疾患に対応しています。
トモセラピーによる治療は、痛みがなく身体的負担が少ないのも利点です。外来での治療にも対応しており、日常生活を送りながら通院で治療が可能です。
どちらも体の外からエックス線ビームをあてて治療を行う装置ということは変わりありません。サイバーナイフは特に極細のビームを用いてピンポン球くらいまでの小さな標的を狙い撃ちするのが得意です。トモセラピーは逆に大きくて複雑な形状の標的や複数の病変にも一度に正確に照射することができます。例えば、乳がん術後には再発予防のため放射線治療が必要なことが多いですが、手術した側の乳房(乳腺)全体を標的にしますので、照射範囲が広いため、トモセラピーを用いて治療します。症例によっては、両装置を組み合わせて治療を行う場合もあります。(広い範囲の照射が必要な場合はラディザクト、治療の後半で腫瘍だけに集中して追加する場合はサイバーナイフなど)実際にどちらの装置を用いて治療するかは、当院の放射線治療医が患者様の現在の状態(がんの大きさ、転移の有無)を診察、主治医からの紹介状、画像検査などさまざまな情報を総合して、的確に判断します。
周囲の正常組織への放射線量を抑え
高線量を投与し、高い治療効果と短期間での治療を
① 小さな標的をピンポイントで狙い撃ち
② 呼吸によって動く標的を追いかけながら治療できる
③ 1~5日で治療が完遂できる
④ 通院での治療ができる
⑤ 再照射が可能な場合がある
1⃣ 骨構造追尾システム
頭蓋骨や椎体の骨構造を利用して自動的に腫瘍の置を確認・補正を行いながら照射を行います。
2⃣ 基準マーカー追尾システム
標的部分の周辺に金属マーカーを留意し、それを指標とした位置補正を行い、照射を行います。
3⃣ 呼吸追尾システム
呼吸サイクルに合わせて動くリニアックにより、呼吸性移動のある腫瘍とともに動く基準マーカーを追尾してとらえ、正確な位置に照射を行います。また、X線画像によってはっきりと認識可能な肺腫瘍に対しては、体内金属マーカーなしで位置を認識し照射を行うことが可能です。
Q1. トモセラピーやサイバーナイフはどこにでもあるの?
サイバーナイフは全国42か所に設置されており、北信越では富山県と当院のみに設置されています。最新サイバーナイフと最新トモセラピー(ラディザクト)の組み合わせは全国2番目の導入となります。(2023年7月時点)
Q2. どういった場合に放射線治療が選ばれるの?
がん治療のすべてのステージで適応になります。つまり、早期がんでの根治を目指した治療から、症状緩和を目指した治療まで、いずれの場合も放射線治療を行うことができます。また、術後の再発予防や、血液疾患に対する骨髄移植前の全身照射に対する治療、良性の脳腫瘍や脳動静脈奇形などの悪性腫瘍以外にも適応となる疾患があります。
Q3. 放射線治療の体への負担は?
高齢者や基礎疾患があって手術や化学療法が困難な患者さんも治療することが可能なほど、身体への侵襲は低い治療です。放射線は目に見えず、照射中も何も感じないので、効果や治療を受けているという実感がわきにくいとは思いますが、近年では治療装置もどんどん進歩しており、治療装置の安全管理も適宜行っていますので、安心して治療をお受け下さい。
Q4. 治療の費用はどのくらいですか?
トモセラピーの場合、1回の照射につき、33,000円ですが、7割が保険でまかなわれますと自己負担金は11,000円となります。前立腺がんや頭頸部腫瘍を例に挙げますと、35回前後の治療が必要な場合、自己負担金は約400,000円となります。
サイバーナイフの場合、3割負担で約19万円です。
高額療養費支給申請を行えば、自己負担を超えた分の払い戻しが受けられます。
Q5. 全く手術しなくていいの?
サイバーナイフは、治療する部位によって病巣の位置を確認する指標が異なります。例えば、頭蓋内病変の場合は頭蓋骨を、脊椎に近い病巣の場合は脊椎を指標に、X線画像で位置補正を行います。X線画像では腫瘍の位置を確認できない部位の場合(前立腺、肺、肝など)、基準となる指標として「マーカー」を体内に埋め込む処置が必要となります。その場合は、治療計画を行う前に2泊3日の入院にて、マーカー挿入術を受けていただきます。
Q6. 痛みや副作用はあるの?
治療中は痛みや熱さなどは感じません。副作用は照射部位に一致した症状が出る可能性はありますが、いずれも軽微なことが多いです。治療前には必ず副作用について説明を行います。
Q7. トモセラピーとサイバーナイフはどっちがいいの?
どちらも性能の高い機械で高精度な治療を行うことができますが、上記のようにそれぞれに得意分野がありますので、患者さんの状態によって使い分けることが重要です。症例によっては、両装置を組み合わせて治療を行う場合もあります。どちらの装置を用いて治療するかは、患者さんの状態や画像検査など様々な情報を基に的確に判断します。
Q8. 入院する必要はありますか?
基本的に外来通院が可能です。仕事をしながら治療を受けていただくこともできます。サイバーナイフではたいていの患者さんは1~5回(1日~1週間)の照射で完結します。トモセラピーではたいてい20~30回ほど(1か月~1か月半程度)です。
放射線治療は完全予約制となります。受診に当たっては院内診療科、またはかかりつけの先生の紹介状をお持ちの上、ご相談・ご予約ください。
受診について