膵がん
チームで臨む膵がん診療
治療方針の分かれ目は手術ができるかどうか
膵がんにおける標準的な治療法には手術、抗がん剤治療、放射線治療があり、がんの大きさや深さ、全身状態により、これらのいずれか、または複数を組み合わせた治療法を選択します。
治療方針を決めるのに、重要なポイントとなるのが、切除が可能かどうか。手術できる状態で発見できるのは、膵がん全体の約40%程度。割合としては少ないのですが、手術でがんを切除できれば、根治する可能性もあります。
膵がんは診断と同様、手術の難易度も極めて高いといわれています。というのも、膵臓はその周りを重要な血管や神経が取り巻いており、いかに血管を傷つけず、出血を抑えて手術を行うかに技量が現れます。当院では安全性を重視し、手術中にエコーで腫瘍と周囲の脈管の位置関係や膵臓の切離ラインを確認。出欠を抑える先進の手術器具やデバイスを用いて、安全かつ確実な手術を追求しています。
膵がんの手術は膵臓の頭側を切除する「膵頭十二指腸切除術」と尾側を切除する「膵体尾部切除」に大きく二分されます。このうち、膵頭十二指腸切除術は十二指腸、胆管、胆のうを含む膵頭部を切除し、切除後には膵臓と小腸、胆管と小腸、胃と小腸などを縫い合わせ、臓器を再建します。このとき注意が必要なのが術後の合併症。特に、残った膵臓と小腸をつなげた場所から膵液が漏れると、致命的な感染症を引き起こすことも。当院は一定数の高難度肝胆膵外科手術実績をもち、「高難度技能専門医修練施設(B)」に認定。高い診療技術で膵がん治療にあたっています。
膵頭十二指腸切除術の平均所要時間は6〜7時間。
半分はがんの切除、残りの半分は臓器の再建術にあてられます。
放射線治療、化学療法を組み合わせる
手術でがんを切除しても、その後、再発するケースは少なくありません。それに対する試みとして、当院では術前の化学療法や放射線療法を併用する治療を始めています。膵がんの化学療法は年々進化しており、現在、2種類の抗がん剤を術前治療に用いています。薬でがんを小さくすることで術後の再発を抑えたり、そのままでは手術が難しい患者さんを手術適応の状態に近づけたりと、治療の制度を高めています。
また、術前に放射線治療を行うケースもあります。当院の放射線治療装置「トモセラピー」ではがんを狙って照射でき、がんを小さくしたり、活動性を落とすことも可能に。また、放射線治療を術前だけでなく術後の再発病変に対して行うこともあります。
手術が難しいがんは、がんの状態や患者さんの希望に応じ、化学療法や放射線治療、緩和ケアなどを行います。また、膵がんによる痛みや不快な症状を緩和するため、内視鏡で腹腔神経ブロック治療も取り入れており、患者さんのQOLを高められるよう努めています。