肺がん
がんの性質に応じてアプローチ 進化する肺がん治療
小さな病変に迫りがんを見極める超音波気管支鏡検査
がんの中で、最も死亡数が多いのが肺がんです。肺がん治療は、がんの性質や悪性度、広がり方などに応じて進化しており、最適な治療法を考えるには、がんの状態を的確に見極める検査が重要な役割を果たします。
そんな肺がん検査において、近年、大きく進化したのが「超音波気管支鏡検査」です。気管支鏡検査とは、口から直径5〜6ミリの内視鏡(気管支鏡)を挿入して気管や気管支の状態を観察し、組織や細胞を採取する検査。画像検査でがんが疑われた場合、確定診断をつけるために行います。 近年CTによる画像検査の精度が上がり、肺の奥にある末梢部の小さな病変も見つけられるようになりました。そこで従来の気管支鏡検査に代わり登場したのが、超音波気管支鏡検査です。気管支鏡の先端に搭載した超音波で末梢部の病変をリアルタイムで写し出し、生検用の鉗子で組織や細胞を採取。気管支の壁越しにリンパ節の細胞を針で採取して転移の有無を調べることもでき、正診率を高めています。
検査は鎮静剤を用い、眠った状態で行います。そのため、検査中に不快感を感じにくく、患者さんの心身への負担も軽減しています。
病変へのルートを的確に示す気管支鏡ナビゲーション
気管支は迷路のように細かく枝分かれしており、末梢部分になるほど病変がどこにあるかがわかりにくい構造となっています。それをサポートするため登場したのが気管支鏡ナビゲーションです。まずCTの画像を3D化し、仮想気管支鏡画像を作成。このバーチャル画像がナビゲーションとなり、がんのある病変へのルートを示し、気管支鏡を誘導します。当院では超音波気管支鏡検査とナビゲーションを使用し、検査の精度と安全性を高めています。
このシステムを使った診断率は90%と高く、短い時間で末梢部の病変にたどり着くことができます。身体に負担をかけずに生検用の組織や細胞をより多く採取することが可能となりました。肺がんの治療法はがんの性質やステージなどに応じて選択されるので、正確な診断は治療精度の向上にもつながっています。
- 気管支鏡ナビゲーションは、3D化したCT画像がナビゲーションとなり、気管支の細く枝分かれした末梢部分のがんの病変まで気管支鏡を誘導。検査の精度を高めています。
転移の有無やがんの状態を調べる多様な肺がん検査
肺がん診断は、気管支鏡検査以外にも段階に応じたさまざまな検査法があります。
最も一般的なのが胸部レントゲン検査です。がん検診でも用いられており、肺の中にがんが疑われる影があるかを診断します。
レントゲンでは写らない病変を発見できるのが、胸部CT検査です。レントゲンで見つかった肺の影をより詳しく調べるのにも有効です。
痰の中にある細胞を顕微鏡で調べるのが喀痰細胞診です。気管や太い気管支の肺がんを発見するのに有効で、胸部レントゲン、CTで発見できないような早期がんが見つかることもあります。ヘビースモーカーの人には、がん検診でもこの検査をおすすめしています。
肺がんは転移しやすいため、生検でがんであることが確定した場合は、PETや頭部MRI、骨シンチグラフィーなどの検査で全身や脳、骨への転移もチェック。これらの検査結果に基づき、治療方法を決定します。