腎がん
腹腔鏡下腎部分切除術
二つの方向から進化した 注目の腎がん手術法
傷を小さくし、腎臓を残す手術法
これまで腎がんの手術は、“体に優しい”という観点から二つの方向に進化を遂げてきました。
- 一つは腹腔鏡を使った手術法。
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- ・傷が小さいため術後回復が早い
- ・痛みが少ない
- ・出血も少ない
- ・傷跡が残りにくい
といった多くの利点があり、今や早期腎がんの標準的な手術法となっています。
「当院では1995年ごろから腎がんの腹腔鏡下手術を開始。2002年に保険適応となって以降、徐々に件数を増やし、2004年7月末から本格的に実施しています」と話すのは泌尿器科主任部長・山本秀和医師。県内でも数少ない腹腔鏡手術認定医の一人で、数多くの手術実績を持っています。
もう一つ、体に優し腎がんの手術法として進化を遂げてきたのが部分切除です。かつての腎がん治療は腫瘍のある腎臓をすべて摘出するのが一般的でした。腎臓は二つあるため、一つを摘出しても残る一つによって機能が保持されるという考え方から、腫瘍を根こそぎ取り除くことが優先されたのです。しかし、近年では出来るだけ腎臓を残す方法が主流になりつつあります。
「小さな腎がんでは、腎臓を残しても根治性は損なわれないことが分かり、更に65歳以下では腎臓を残した方が、前生存率が高いと報告されました。」(山本医師)
手術による傷を小さく、腎臓をできるだけ残す。この2つの考え方を組み合わせた手術法が、腹腔鏡下腎部分切除術です。腹腔鏡を使って腎臓を最上限に留め、腎臓の腫瘍を部分的に切り取ります。
腎周囲を剥離し腫瘍を露出
腎動脈を阻血し、腎腫瘍をはさみで切除した直後(右上に切除した腫瘍が見える)
切除面を縫合結紮した状態(血流を再開しても出血はない)
熟練のテクニックで素早く正確に
- 腹腔鏡下手術では、3センチ程度の傷で済みます。
- 真剣なまなざしの一方で、患者さんが緊張しないようにも気を配る
腹腔鏡下部分切除術はお腹の中にカメラを入れ、モニターに映し出される映像を見ながら行います。
この手術で最も重要となるのが血管の処置です。腎臓は血管の塊のような臓器なので、腫瘍を切除する時は出血を抑えるため、動脈を一時的に阻血(血流を止めること)して手術を行います。しかし、長時間血流を止めると腎臓の組織が障害され、腎機能が低下してしますので、切除から縫合までの一連の処置はできるだけ手短に行わなければなりません。
「阻血時間は1時間が限度。いかに阻血時間を短くし腎臓のダメージを少なくするかが、この手術の大きなポイントとなります。」と山本医師。3センチ程度の傷で手術可能腹腔鏡下手術では、3センチ程度の傷で済みます。熟練のテクニックが必要となるため、この手術は限られた病院でしか行われていませんが、当院でこの手術を行われた方は、術後の腎機能にも問題なく、治療成績は良好。術後、1週間ほどで退院が可能です。開腹手術だと25センチほどの傷がつきますが、この手術法だと3センチ程度。1年後にはほとんど目立たなくなります。