薬剤治療

進化する薬剤をより効果的に治療につなげていく

各診療科と連携し、がんを専門に診る 「腫瘍内科」

各診療科と連携し、がんを専門に診る 「腫瘍内科」

がんの治療は、手術で病巣を摘出する「外科治療」、トモセラピーなどを使った「放射線治療」、そして、抗がん剤などを用いる「薬剤治療」の三つに大別できます。
ほかの二つの治療法と違い、薬剤治療は点滴や内服で薬剤を投与する「全身的治療」を役割としています。ここ十数年でがんの治療薬は飛躍的に進歩し、薬剤治療への期待が年々高まっています。
当院では早くから、がん薬剤治療を専門とする「腫瘍内科」を設置し、力を入れてきました。これまでのがんはその部位に応じて診療科ごとに診察・治療を行うのが一般的でしたが、腫瘍内科を設けることで、がんをより広い視野で捉えることができるようになりました。各診療科と連携を図りながら、抗がん剤などの薬剤を効果的に用いる治療を行える体制を確立し、薬剤療法による低侵襲のがん治療に取り組んでいます。

がん薬剤治療の歩みと可能性

現在「抗がん剤」と呼ばれるものの多くは、「細胞障害性薬剤」を指し、がん薬剤治療の主となる薬剤です。がん細胞が分裂増殖する特性を狙い、細胞の分裂を阻害する作用があります。正常な細胞にも作用してしまうため、副作用は避けて通ることができませんが、最近ではこれら副作用を抑えるための薬剤が次々と開発されています。
21世紀に入って新たに登場した「分子標的治療薬」は、正常な細胞には存在せず、がん細胞にのみ現れる「特徴のある分子」を標的として捉えて作用する薬剤です。効率的かつ副作用をより低く抑えながら、治療効果を上げるものとして期待されています。
そして現在、世界的に大きな注目を集め急速に開発が進められているのが「免疫チェックポイント阻害剤」です。2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞したことでも知られる、全く新しい仕組みのがん免疫療法で、直接がん細胞に作用するのではなく、患者さんが本来備えている「免疫細胞」の働きを活発にすることでがん細胞を攻撃することを目的としています。従来の抗がん剤のような副作用は起きないといわれていますが、免疫に作用するため自己免疫性疾患などを併発する可能性が考えられます。

薬剤治療の目的と効果

●治癒や余後の改善を目的に使用する
薬剤治療でがんを小さくすることで、多くのがんで予後の改善が期待できます。白血病や悪性リンパ腫など血液のがんでは、治癒の可能性も見込まれます。
●他の治療法と組み合わせる
薬剤治療と他の治療法を組み合わせる方法も増えています。例えば手術を行う前に薬剤治療でがんを小さくすることで、切除範囲を小さく留めることができます。
●再発を予防する
手術でがんを切除しても、再発の可能性がある場合は薬剤治療を行い、転移や再発などを予防。術後の治療として行っています。
●痛みをやわらげる
薬剤治療には、痛みを緩和する役割もあり、患者さんの状態に合わせて薬剤をコーディネート。心身の苦痛の少ないがん治療を行っています。

専門スタッフによるチーム医療が不可欠

医師、薬剤師、看護師のチーム

医師、薬剤師、看護師のチームで患者さんの症例を検討。ここで話し合われた内容に基づき、医師が治療計画を作成します。

医師、薬剤師、看護師のチーム
腫瘍内科医が専門医として常駐している病院はまだまだ少ない。当院は数少ない専門医常駐病院の一つ。

薬剤治療に用いる抗がん剤は、他の薬剤に比べると副作用が強く扱い方も難しくなります。一口に抗がん剤と言っても、点滴と飲み薬があり種類も多種多様。それらを管理し、正しく取り扱うには専門的な知識やスキルを持つスタッフの存在は不可欠です。
中山医師は「日本臨床腫瘍学会専門医」。その他にも、「がん専門薬剤師」「がん化学療法看護認定看護師」といった専門スタッフも配備。それぞれの専門的立場から、患者さん一人ひとりの症状、がんの進行度合い、副作用などを検証し、打ち合わせを重ねながら、その患者さんにあった抗がん剤治療を考えていきます。専門スタッフ、各診療科の医師とが連携してがん治療にあたることで、患者さんに安心して治療を受けていただくことができます。海外ではあたりまえに活躍する腫瘍内科医は日本ではまだ少なく、腫瘍内科と各診療科との連携体制は画期的な取り組みです。
また、当院では月に1 回、薬剤治療委員会を開催しています。医師をはじめ、さまざまな職種のスタッフが集まり、抗がん剤の副作用や投与法などの情報交換を行い、課題をピックアップ。それぞれの専門的な視点から薬剤治療を見つめることで、質の向上に努めています。

これまでは臓器別にがんを診るのが一般的でしたが、腫瘍内科を設けることで、統合的にがんを診ることができる新しい視点が加わりました。



安全な抗がん剤治療を支える がん薬物療法認定薬剤師

薬剤を管理するプロフェッショナル

五十嵐 弘幸

薬剤部副部長
がん専門薬剤師
五十嵐 弘幸

佐野 正毅

薬剤部部長
佐野 正毅

薬剤治療の専門スタッフとして重要な役割を果たしているのが薬剤師です。抗がん剤はがん細胞を抑える働きがある一方で、正常な細胞にもダメージを与えてしまうシビアな薬剤です。そのため効果を十分発揮させるためにも、安全性への配慮が非常に重要となっています。

新たな治療計画(レジメン)を行う場合、医師・薬剤師・看護師で構成する「レジメン部会」で有効性、安全性を確認。その後、薬剤師が抗がん剤専用のオーダリングシステムに登録、一括管理を行なっています。システムにより、過量投与などの入力間違いを防ぐことが可能となりますが、薬剤部ではさらに、患者さんごとにレジメンの種類、投与量、スケジュール、検査データなどを綿密にチェック、必要に応じ医師に確認を行っています。また抗がん剤の混合も薬剤師の仕事。薬剤部地下にある無菌室で専門の知識を活かし、正確、安全かつ衛生的に作業を行なっています。

医師から申請されたレジメンは専用のオーダリングシステムにて管理。オーダ後は患者ごと薬剤、投与量、スケジュールなどをチェック。

薬剤治療を安全に行うためには適切な治療が行われているかを確認することが必要です。また患者さんに投与する際には、計画された投与量に従い正確かつ迅速に混合調剤しなければなりません。そのため何重ものチェック体制をしき、細心の注意を払って作業をしています。

患者さんの不安を和らげ 副作用を未然に防ぐ

無菌室内の安全キャビネットで抗がん剤を混合する薬剤師。マスク・手袋等を装着し、正確、安全かつ衛生的に作業を行うよう徹底しています。

薬剤治療において副作用はほぼ必発であり、安全に治療を行うには抗がん剤の副作用や注意点などを患者さんに理解してもらうことが重要になります。患者さんは最初に、医師から治療内容について説明を受けていますが、患者さんの疑問や不安にこたえるため、薬剤師が服薬指導を実施しています。

薬剤師は患者さんが安心して治療を行えるよう、わかりやすい薬事指導を行っています。また患者さんを頻回に訪問し体調を確認することで、副作用の予防、早期発見さらには適切な支持療法の提案を行い、患者さんをサポートできるよう努めています。
新たな抗がん剤が次々開発され、薬剤治療の種類は多種多様となっています。これから薬剤師は、患者さんに合わせたオーダーメイドな治療の実践にかかせない存在として期待されています。

患者さんの痛みに向き合う がん化学療法看護認定看護師

認定看護師が薬剤治療の外来治療をフォロー

藤田 弘子

看護師長
がん化学療法看護認定看護師
藤田 弘子

中川 敦子

看護副師長
がん化学療法看護認定看護師
中川 敦子

看護師も薬剤治療において、なくてはならない存在です。当院では、がん化学療法看護認定看護師が在籍し看護にあたっています。
認定看護師が所属するのが、アメニティールームです。アメニティールームとは薬剤治療を行う外来治療室。通院しながら薬剤治療を受ける患者さんが、快適に治療を受けていただけるよう設けられた専用ルームで、ここで点滴による抗がん剤の投与を受けます。投与時間は短い人でも約1時間、長い人だと5~6時間に及ぶこともあります。看護師は投与中の患者さんの様子を観察しながら、薬剤治療をサポートしています。

患者さんの不安を和らげ 副作用を未然に防ぐ

薬剤治療につきものなのが副作用ですが、この副作用のケアも、がん化学療法看護認定看護師の大きな役割の一つです。薬によってどういう副作用が出るかはだいたい決まっていますが、副作用の出方が同じだからといってケアも同じというわけではありません。外来で治療を受けておられる患者さんの日常の生活スタイルを考慮し、どうしたら苦痛を軽減して快適に過ごしていただけるかを考えて対応しています

患者さんが安心して治療を受けていただけるよう、看護師間で情報の共有化も徹底しています。
看護師はスタッフの中でも患者さんとの接点が最も多いので、安心感をもっていただけるよう、どの看護師が担当しても同じレベルの看護を提供できるよう努めています。
副作用に対する苦痛の緩和はもちろん、脱毛などの諸症状、日常生活における不自由な点など、薬剤治療で生じた問題にも対応しています。

アメニティールームは、リクライニングチェア(マッサージ付き)、電動ベッドを完備。液晶TVも備え、DVDを鑑賞しながらゆったりと治療を受けていただけます。

化学療法で使用する抗がん剤の投与内容を、看護師が事前に説明。患者さんに安心して治療を受けていただけるよう努めています。

抗がん剤の副作用で脱毛が気になる方には ウイッグ(かつら)のご相談も承っています。

診療スタッフ

腫瘍内科スタッフ

腫瘍内科部長 中山 俊
腫瘍内科部長中山 俊
がんに関する相談・お問い合わせ

がん相談支援センター
(南館1階 集学的がん診療センター内)

〒918-8503 
福井県福井市和田中町舟橋7番地1

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平日 8:30~17:00(土・日曜日、祝祭日を除く)

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