心と体に優しいがん診療

患者さんの立場で考えるこれからのがん治療

一人ひとりに寄り添う〝患者さんに優しいがん治療〞

最新鋭の放射線治療機器

 「がん」は日本人の死因の第1位となっており、2人に1人が経験するともいわれています。つまり「がん」は特別な病気ではなく、誰にでも起こり得る身近な病気といっても過言ではありません。一方、一口に「がん」といっても、患者さんは一人ひとり病状も違えば、年齢も、家族構成も、社会的立場も異なります。つまり、個々の患者さんの立場で考え、がんにかかったことを受け入れていただいた上で、その方にとっての最善の治療法を考えていく支援が、これからのがん診療には不可欠です。
そのような流れの中から生まれてきたのが、「心と体に優しいがん治療」という考え方です。痛みや苦痛をできる限り取り除き、不安や悩みに寄り添えるがん診療をめざして、私たち福井県済生会病院は「患者さんに優しいがん治療」をテーマに掲げ、がん診療連携拠点病院として取り組んでいます。

予防と早期発見でがんのリスクを最小限に

がんに対する備えとして重要なのが予防です。発がん原因が特定されており、それに対する治療で対策できるものや、食事や嗜好品など生活習慣の改善により予防できるものがあり、こういったことで7割近くのがんは予防できることが分かっています。原因がわかっているものの代表が肝がんです。C型・B型肝炎のウイルスを駆除することで、多くの肝がんの発症は予防できます。また、発症数第1位の胃がんも、ピロリ菌の除去により予防できる時代となりました。もちろん、喫煙は肺がんのみならず多くのがんとの関連がいわれており、受動喫煙の予防のために行政も対策を始めています。当院は福井県唯一の肝疾患診療拠点病院として、肝炎ウイルス検査の啓蒙活動を実践しており、また、県内で最初に開設した「禁煙外来」では成功率の高い禁煙方法を指導しています。
 予防に次いで重要なのが早期発見です。がんは早く発見できれば治療の選択肢が広がり、完治の可能性も高くなります。当院の健診センターでは、CTや内視鏡検査に加え「PET-CTがん健診」を実施し、高性能な機器で従来の検査では見つけにくかったがんの発見を目指しています。さらに2012年からは採血のみで4種の消化器系がんを診断することが可能な「マイクロアレイ検査」も導入しました。さらに、発見が最も困難で、治療成績も低い膵がんの対策として、2015年に「膵疾患外来」を開設。2019年からは「かかりつけ医」の先生方に超音波による診断方法の指導を開始するなど、専門家による早期発見を推進しています。

手術、放射線治療化学療法、緩和ケアなど治療も大きく進化

TAE

 「心と体に優しい」という観点から、治療法も大きく進歩を遂げています。その一つが放射線がん治療機「トモセラピー」によるがん治療です。通院治療で痛みなく、CTと連動した高線量の放射線でがんを正確に狙いうちできるため治療成績も良好です。特に前立腺がんでは、手術後の尿漏れなどの副作用もなく体に優しい治療です。
 手術の方法も少しずつ変わってきています。胃がんや大腸がん、肺がんでは内視鏡・腹腔鏡・胸腔鏡による手術を実践し、開腹・開胸部分を縮小。術後の痛みを抑え、回復も早められるよう努めています。
 肝がんにおいては、血管の中からがんにアプローチするTACEという安全な手法を推進。海外の医療機器メーカーと共同でTACE専用のキットや画像システムの開発にも携わっています。さらに、化学療法では「腫瘍内科」を開設し、専門医が各科と連携を図って治療を行っており「アメニティールーム」では快適な環境で外来化学療法が受けられます。
 もちろん、緩和ケアにも先進的に取り組んでおり、1 9 9 8年に県で最初に「緩和ケア病棟」を開設。がんと診断されたときから身体面・精神面で苦痛の少ないケアを実施しています。

チームで患者さんを支える集学的がん診療

チームで患者さんを診る時代

 予防から検査、治療、予後のサポートまで一貫した支援を実践するためには、様々な専門家によるチームでの支援が不可欠です。当院は2011年に「集学的がん診療センター」を開設しました。最初にがんに関するあらゆる相談に対応する窓口を整備し、国立がん研究センター認定のがん専門相談員を配置しました。さらに、市民公開講座やがんミニレクチャーなどで、がんに関する情報を積極的に発信。がんを経験された方や専門医らスタッフと交流する「メディカル・カフェ」や「がん哲学外来」での心の支援、加えてハローワーク、産業保健総合支援センターなどとの連携による就労支援や、親御さんががんにかかった子どもたちのサポートプログラムなど、多方面からがん患者さんの支援に取り組んでいます。また、2017年には、子どもたちへのがん教育も県内で最初に開始しました。退院した患者さんが自宅でも安心してがん診療を受けられるよう、専門知識を持つ認定看護師や緩和ケアチームを地域の医療機関に派遣するなど、在宅診療の支援にも取り組んでいます。
 がんは怖い病気ではありますが、正しい情報を知ることでよりよい方策を見つけることができることを、知っていただければと思います。

がんに関する相談・お問い合わせ

がん相談支援センター
(南館1階 集学的がん診療センター内)

〒918-8503 
福井県福井市和田中町舟橋7番地1

受付時間 
平日 8:30~17:00(土・日曜日、祝祭日を除く)

がん相談直通ダイヤル

0776-28-1212

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